1992年1月にPaisley Park Studiosで撮影されたスタジオ・ライブの映像。映像集「ダイアモンド・アンド・パールズ~ビデオ・コレクション」から。
■ Live 4 Love
1992年6月のDiamonds And Pearls Tourロンドン公演を編集した映像。湾岸戦争について歌った曲。映像集「ダイアモンド・アンド・パールズ~ビデオ・コレクション」から。
プリンスの公式YouTubeチャンネルに最初の動画が投稿されたのが2017年7月7日で、この日からほぼ毎週、日本時間の金曜日深夜に1本から3本くらいのミュージック・ビデオが追加されていたのですが、2018年1月26日に投稿された「I Hate U」を最後に、ビデオの追加が停止しています。
これまでに公開された動画の数は70本。でも、けっこう取りこぼしがあって、権利関係のややこしさをすっ飛ばして思いつくままに例をあげると、「Black Sweat」「Chocolate Box」「Rock And Roll Love Affair」あたりの、そこそこ新しい曲のビデオの多くがまだですし、「Pink Cashmere」が公開OKなら「Peach」もいけそうですし、そもそも「Purple Rain」のビデオがまだです。「ダイアモンド・アンド・パールズ~ビデオ・コレクション」や「スリー・チェインズ・オブ・ゴールド」のような映像集を曲単位で刻んで公開するのがOKなら、「The Beautiful Experience」や「Live At The Aladdin Las Vegas」あたりからも出せるものが多くありそうです。
タイトルは『Prince and the Purple Rain Era Studio Sessions: 1983 and 1984』、著者はDuane Tudahl。1983年の1月1日から1984年の12月31日の期間にプリンスがスタジオでどのような録音を行っていたかを、関係者へのインタビューや、録音スタジオとレコード会社に残された記録などを元にして、一日一日詳細に記録されています。この本のための調査が開始されたのは、なんと1994年、Sunset Studioのスタジオ・エンジニア、Peggy McCrearyへのインタビューが最初で、本が書き上げられたのは、プリンスが亡くなる1ヶ月前の2016年3月。つまり、この本の完成には23年の時間と労力が費やされています。
1983年の1月1日から1984年の12月31日の期間に、プリンスは100から150くらいの曲を作曲して録音しています。その内訳は、Prince and the Revolutionの2枚のアルバム『Purple Rain』『Around The World In A Day』収録曲と、それらのシングルのB面曲、The Time『Ice Cream Castle』、Apollonia 6『Apollonia 6』、Sheila E.『The Glamorous Life』、The Family『The Family』などのプロデュース・アルバム、The Bangles「Manic Monday」、Steve Nicks「Stand Back」、Sheena Easton「Sugar Walls」といった他アーティストへの提供曲、その後の様々なアルバムに収録された曲と、現在も未発表になっている多くの曲などなどです。これらの曲を、どのような順番で、どのような期間をかけて、どのように録音していたのかが書かれています。
1983年から1985年はいわゆる「プリンス・ファミリー」と呼ばれるプロデュースしたグループや、バンド・メンバーたちとプリンスの関係が大きく変化した期間でもあります。映画『パープル・レイン』のためもあって、1人で多重録音して作った曲をライブで再現するための存在だったバンド・メンバー達は前面に押し出されるようになり、バンドに新加入したWendy Melvoin(加入当時は19歳)の影響から、プリンスは周囲からの影響を曲作りに強く反映させるようになります。それを象徴する曲が「Around The World In A Day」で、この曲のもともとの作者はLisa Colemanの弟のDavid Colemanなのですが、彼とJonathan Melvoin(Wendyの弟)の二人が作ったデモテープをWendyとLisaの車のカーステレオで聴かされたプリンスが衝撃を受け、二人の弟達を呼び出して一緒に録音し直したものがリリースされているバージョンなんだそうです。他にもアルバム『Around The World In A Day』全体にあるサイケデリックな雰囲気はDavid Colemanからの影響が大きく、彼がスタジオに持ち込んだ多くのマイナー楽器(たとえば「Raspberry Beret」などでチャリチャリと鳴っているフィンガーシンバルなど)がプリンスのインスピレーションを引き出しています。
過去(1991年)に『プリンス大百科』というプリンス研究本があり、これまでに日本で出版された研究本の中で最重要な本だと思うのですが、その本の著者Per Nilsenと、この『Prince and the Purple Rain Era Studio Sessions: 1983 and 1984』の著者Duane Tudahlは関係が深く(Uptown Magazineつながり)、Duane Tudahlは近年プリンス研究への情熱を失っていた(らしい)Per Nilsenから、彼の所有していた資料をすべて引き継いで、この本を作ったそうです。Per Nilsenの『プリンス大百科』や『The Vault』同様に、この本には著者の感想や評論などの記述はほとんど無く、取材に基づく情報だけが丁寧に積み重ねられています(取材に基づく情報であっても、根拠の薄い情報には、しっかりと曖昧な情報だと記載されているという信頼性の高さ)。
最初の80年代メガミックス「Rocks The Casbah」が発表されたのが1996年、80年代第2弾が2000年、90年代版が2009年、そして00年代版が2018年と、DJ Spinbad的には各年代が終わってから10年弱くらいで振り返るのがちょうど良いという時間感覚になっているようです。2010年代版が聴けるのは2028年くらいか。