今の Autechre があるのは BUCK-TICK のおかげ

Autechreの過去のリミックス仕事について調べていたら、毎度おなじみ、それ系の音楽ファンが集まっていることで知られる海外のBBSサイト、WATMM(We Are The Music Makers Forums)の過去ログの中に、気になる記述を見つけました。話題となっているのは、日本のバンド、BUCK-TICKが1994年に発表したリミックス・アルバム『シェイプレス』です。Autechreによる「Iconoclasm (Don’t X Ray Da DAT Mix)」を収録しています。

MarinaStewart : レアなアイテムといえば、BUCK-TICKの本に付属されたリミックス集(Aphex TwinとRichard H Kirkの素晴らしいリワークも収録されている)を例外的に安い値段で入手した。本はまあまあで、典型的な腐ったポラロイド写真と顔の接写、もしくは画像を操作して色彩を融解させたようなものが載っている。Autechre目当てでなくても入手する価値はある。数年後にドイツの雑誌『Raveline』に載ったAutechreのインタビューを読んだが、それによると、彼らのリミックスにBUCK-TICKが支払った金額は4000ポンド(注:94年のレートで約62万円)。それまでに彼らがやったリミックス仕事の中で最高額だったそうだ。

Joseph : インタビューで彼らのどちらかが言っていたので覚えているのは、この(BUCK-TICKの)リミックスの依頼が来た時、ちょうど彼らは音楽をやめて「ちゃんとした仕事」に就くことを考えていた時期で、彼らにとって極めて重要な作品なんだって。

上の情報の裏付けのためにドイツの雑誌『Raveline』の該当インタビューを探しましたが、発見できず。しかし、その代わりに、日本の英字新聞ジャパンタイムズのサイトに2005年に掲載されたAutechreのSean Boothへのインタビュー記事の中に、情報と似通った発言を見つけました。

私達の人生のある時点で、音楽を取るかクソみたいな仕事を取るか選択する必要に迫られる、本当に困難な限界点があった。そして、ちょうどその時にBUCK-TICKがリミックスを依頼してきた。そのおかげで仕事を辞めて、音楽に集中できた。どれだけ彼らの依頼に助けられたか、彼らは認識してないだろうけどね。

2013年に先述のBBSサイトWATMMで行われたAutechreの二人への質問大会「AAA – Ask Autechre Anything」の中で、一番好きなリミックス作品を尋ねられて、Sean Boothが下のように答えています。

私にとっては、たぶんBUCK-TICKのリミックスだろう。永遠のフェイバリットだ。

90年代中頃のAutechreは『シェイプレス』の後にも、今井寿(BUCK-TICK)と藤井麻輝(当時SOFT BALLET)のユニット、SCHAFTのデビュー・アルバム『Switchblade』、SOFT BALLETのリミックス集『FORMs』、藤井麻輝の当時の妻である濱田マリのソロ・アルバム『編む女』、Nav Katzeのリミックス集『Never Mind The Distortion II』といった日本人アーティストの作品にリミックスやミックスで関わっています。濱田マリ『編む女』を除くすべての作品はビクターエンタテインメントからの作品で、『シェイプレス』をきっかけにビクターとの間に良好な関係が築かれていたことがうかがえます。




『シェイプレス』が出たのが94年の夏で、Autechreのセカンド・アルバム『Amber』はその秋、『Basscad EP』が94年の春です。今でこそ大御所の風格漂うAutechreですが、当時世に出たばかりの彼らにスパッと仕事を辞められるだけの金額を払ったビクターの決断に、いろんな意味で震える2016年です。

ラジオ「ありがとう浜村淳です」での浜村淳の気になる発言&行動記録:2016年版

ラジオ番組「ありがとう浜村淳です」関連の自分ツイートまとめの2016年版を公開しました。2016年度も快調に飛ばす浜村大先生の勇姿をご確認ください。

2016年版は上半期版と下半期版に分けました。

以下は過去のまとめです。