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Aphex Twinのおすすめ動画(一心不乱にMPCを操るアゼルバイジャンの中高年男性)

1年ほど前にuser18081971ことAphex TwinがSoundCloudに「Uchoob trax links [your fave music or other REALLY interesting music] not just any old crap」というタイトルの音声を投稿していて、この曲のコメント欄を利用して自身のオススメの曲の動画を紹介したり、ファンのオススメの曲にコメントしたりと、日々ワイワイとやっています。

そのコメント欄に最近user18081971が投稿した動画がなかなか衝撃的だったので、関連動画なども含めてここに転載しておきます。

一心不乱にMPCを操るこの中高年の男性、どうやらCavad Recebovという名前の人物で、アゼルバイジャンで活動するミュージシャンです。基本的には歌手のようで、パーカッションも演奏します。地元のワイドショー的なテレビ番組にレギュラー出演しているらしく、そこでの演奏動画がYouTube上に多く転がっています。

3分40秒あたりからMPC5000と謎の弦楽器のスーパー・セッション。

謎のDJとのスーパー・セッション。ここで使っているのはMPCではなく、おそらくAKAIのリズムマシン、XR-10。ベイス!

シェフが料理を作る横で唸りをあげるAKAI XR-10、地獄のオーケストラ・ヒット。

1988年の演奏動画。この時代からドラムマシンをフル活用。

公式ビデオが作られているCavad Recebovの曲はこんな感じの雰囲気です。

日本に置き換えると、細川たかしが「ヒルナンデス!」でNative Instruments Maschineを叩いてるような感じでしょうか。アゼルバイジャン、いいですね。

2016年ベストミュージック

2016年に発表された音楽の中から、よく聴いた10作品を選びました。

Powell – Sport

これぞテクノ・パンク。これぞエレクトロ・ポスト・パンク。(Amazon / iTunes)



Adrian Younge – The Electronique Void Black Noise

ヒップホップ魂のこもったヴィンテージなシンセサイザー音楽。(Bandcamp / Amazon / iTunes)



Blancmange – Commuter 23

70年代ジャーマン・ロックを、10年代的に演奏する、80年代に活躍したシンセ・ポップ・バンドの最新作。(Amazon / iTunes)



Childish Gambino – Awaken, My Love!

実質的にFunkadelicの新譜。(Amazon / iTunes)



The Dandelion Set & Alan Moore – A Thousand Strands 1975-2015

元Rockers Hi-FiのGlyn Bushによるサイケデリック・ロック・バンド。詩を『ウォッチメン』『Vフォー・ヴェンデッタ』の原作者のAlan Mooreが担当。アルバム宣伝DJMixも良かったです。(Bandcamp / Amazon / iTunes)



Aleksi Perala – The Colundi Sequence Level 16

サイン波と不思議音律を探求するRephlex残党。(Bandcamp)



2814 – Rain Temple

国籍不明の重量級チルアウト。(Bandcamp / Amazon / iTunes)



Equiknoxx – Bird Sound Power

ジャマイカ発のおもしろダンスホール。(Amazon / iTunes)



Zomby – Ultra

BurialやDarkstar等との共演曲を含んだことで、これまで以上にアルバムらしくまとまってます。(Amazon / iTunes)



Andy Votel – Selectors Podcast 007

めくるめくトルコ・サイケデリック・ロック&ファンクの世界。(SoundCloud)



他によく聴いたのは、Autechre『Elseq 1-5』Aphex Twin『Cheetah EP』Matrixxman『Sector I Rhythm』Jay Daniel『Broken Knowz』Prince『HITNRUN Phase Two』あたりです。当然というべきか、プリンスしか聴いていない時期もありまして、プリンスが亡くなったことをどのように受け止めれば良いのか、考えあぐねてるうちに1年たっていた、という感じの2016年でした。

今の Autechre があるのは BUCK-TICK のおかげ

Autechreの過去のリミックス仕事について調べていたら、毎度おなじみ、それ系の音楽ファンが集まっていることで知られる海外のBBSサイト、WATMM(We Are The Music Makers Forums)の過去ログの中に、気になる記述を見つけました。話題となっているのは、日本のバンド、BUCK-TICKが1994年に発表したリミックス・アルバム『シェイプレス』です。Autechreによる「Iconoclasm (Don’t X Ray Da DAT Mix)」を収録しています。

MarinaStewart : レアなアイテムといえば、BUCK-TICKの本に付属されたリミックス集(Aphex TwinとRichard H Kirkの素晴らしいリワークも収録されている)を例外的に安い値段で入手した。本はまあまあで、典型的な腐ったポラロイド写真と顔の接写、もしくは画像を操作して色彩を融解させたようなものが載っている。Autechre目当てでなくても入手する価値はある。数年後にドイツの雑誌『Raveline』に載ったAutechreのインタビューを読んだが、それによると、彼らのリミックスにBUCK-TICKが支払った金額は4000ポンド(注:94年のレートで約62万円)。それまでに彼らがやったリミックス仕事の中で最高額だったそうだ。

Joseph : インタビューで彼らのどちらかが言っていたので覚えているのは、この(BUCK-TICKの)リミックスの依頼が来た時、ちょうど彼らは音楽をやめて「ちゃんとした仕事」に就くことを考えていた時期で、彼らにとって極めて重要な作品なんだって。

上の情報の裏付けのためにドイツの雑誌『Raveline』の該当インタビューを探しましたが、発見できず。しかし、その代わりに、日本の英字新聞ジャパンタイムズのサイトに2005年に掲載されたAutechreのSean Boothへのインタビュー記事の中に、情報と似通った発言を見つけました。

私達の人生のある時点で、音楽を取るかクソみたいな仕事を取るか選択する必要に迫られる、本当に困難な限界点があった。そして、ちょうどその時にBUCK-TICKがリミックスを依頼してきた。そのおかげで仕事を辞めて、音楽に集中できた。どれだけ彼らの依頼に助けられたか、彼らは認識してないだろうけどね。

2013年に先述のBBSサイトWATMMで行われたAutechreの二人への質問大会「AAA – Ask Autechre Anything」の中で、一番好きなリミックス作品を尋ねられて、Sean Boothが下のように答えています。

私にとっては、たぶんBUCK-TICKのリミックスだろう。永遠のフェイバリットだ。

90年代中頃のAutechreは『シェイプレス』の後にも、今井寿(BUCK-TICK)と藤井麻輝(当時SOFT BALLET)のユニット、SCHAFTのデビュー・アルバム『Switchblade』、SOFT BALLETのリミックス集『FORMs』、藤井麻輝の当時の妻である濱田マリのソロ・アルバム『編む女』、Nav Katzeのリミックス集『Never Mind The Distortion II』といった日本人アーティストの作品にリミックスやミックスで関わっています。濱田マリ『編む女』を除くすべての作品はビクターエンタテインメントからの作品で、『シェイプレス』をきっかけにビクターとの間に良好な関係が築かれていたことがうかがえます。




『シェイプレス』が出たのが94年の夏で、Autechreのセカンド・アルバム『Amber』はその秋、『Basscad EP』が94年の春です。今でこそ大御所の風格漂うAutechreですが、当時世に出たばかりの彼らにスパッと仕事を辞められるだけの金額を払ったビクターの決断に、いろんな意味で震える2016年です。