Autechreの過去のリミックス仕事について調べていたら、毎度おなじみ、それ系の音楽ファンが集まっていることで知られる海外のBBSサイト、WATMM(We Are The Music Makers Forums)の過去ログの中に、気になる記述を見つけました。話題となっているのは、日本のバンド、BUCK-TICKが1994年に発表したリミックス・アルバム『シェイプレス』です。Autechreによる「Iconoclasm (Don’t X Ray Da DAT Mix)」を収録しています。
MarinaStewart : レアなアイテムといえば、BUCK-TICKの本に付属されたリミックス集(Aphex TwinとRichard H Kirkの素晴らしいリワークも収録されている)を例外的に安い値段で入手した。本はまあまあで、典型的な腐ったポラロイド写真と顔の接写、もしくは画像を操作して色彩を融解させたようなものが載っている。Autechre目当てでなくても入手する価値はある。数年後にドイツの雑誌『Raveline』に載ったAutechreのインタビューを読んだが、それによると、彼らのリミックスにBUCK-TICKが支払った金額は4000ポンド(注:94年のレートで約62万円)。それまでに彼らがやったリミックス仕事の中で最高額だったそうだ。
Joseph : インタビューで彼らのどちらかが言っていたので覚えているのは、この(BUCK-TICKの)リミックスの依頼が来た時、ちょうど彼らは音楽をやめて「ちゃんとした仕事」に就くことを考えていた時期で、彼らにとって極めて重要な作品なんだって。
90年代中頃のAutechreは『シェイプレス』の後にも、今井寿(BUCK-TICK)と藤井麻輝(当時SOFT BALLET)のユニット、SCHAFTのデビュー・アルバム『Switchblade』、SOFT BALLETのリミックス集『FORMs』、藤井麻輝の当時の妻である濱田マリのソロ・アルバム『編む女』、Nav Katzeのリミックス集『Never Mind The Distortion II』といった日本人アーティストの作品にリミックスやミックスで関わっています。濱田マリ『編む女』を除くすべての作品はビクターエンタテインメントからの作品で、『シェイプレス』をきっかけにビクターとの間に良好な関係が築かれていたことがうかがえます。