2023年ベストミュージック

2023年に発表された音楽の中から、よく聴いた10作品を選びました。

Everything But The Girl – Fuse

しっかりと現代的なビートに、しっかりと現代的な歌声。ビデオも最高です。

Bawrut – Raqs EP

イタリア出身マドリッド在住の人。いろんな要素がすごく自然にダンストラックの中に混じり合ってます。

Panda Bear & Sonic Boom – Reset in Dub

Adrian Sherwoodによるアルバムまるごとダブ盤。世の中のすべての音楽をAdrian Sherwoodにダブ化してもらうべきでは。

Sonic Youth – Live in Brooklyn 2011

解散直前、アメリカでの最終公演のライブ盤。選曲も演奏も最高。やっぱりソニック・ユースの代わりになるものは無いですね。

Floating Points – Birth4000

生きたベースライン。

James Holden – Imagine This Is A High Dimensional Space Of All Possibilities

90年代レイブパーティのチルアウト・ルームへの憧憬。

PJ Harvey – I Inside the Old Year Dying

新譜を出すごとに、うどんの名店の出汁のように透明に、シンプルになっていってます。

Unknown Mortal Orchestra – V

アトランタのラッパーLil Yachtyの新アルバムでのサイケロック化が素晴らしくて、そこにプロデュースで関わってる中の一人がこのバンドの人。

冬にわかれて – flow

寺尾紗穂、伊賀航、あだち麗三郎のバンド。余白のある歌と音。

Jungle – Volcano

この音像、特にアホみたいに残響が乗った粗いボーカルの音像に痺れました。アルバム全曲のビデオが公開されていて、これが音楽の力とダンサーの力を100%信頼した内容で全編素晴らしいです。監督のCharlie Di Placidoは、このリストの一番上に貼ったEverything But The Girlの最高のビデオも監督してます。

世の中すっかり「明けた」感じになっていますが、自分は取り残されたまんまになってる気持ちです。Twitterの激動もありましたが、それ以上にBandcampが危機に陥ってしまってる状況が明らかになったのは、非常にショッキングでした。あとはやっぱりAIが大きいですね。音楽の作り方も聴き方も大きく変わることになりそうです。世の中の激変の入り口に立ってるんじゃないかという思いだけは強く高まった2023年でした。

そんなこんなで、よく聴いた曲をガサっとSpotifyにまとめたので、新しい音楽との出会いのきっかけになれば嬉しいです。曲順にはまったく意図はないので、シャッフルして聴いてください。

2022年ベストミュージック

2022年に発表された音楽の中から、よく聴いた10作品を選びました。

Plaid – Feorm Falorx

久しぶりに明るい側面と踊れる側面がたくさん出てるPlaidです。

Louis Cole – Quality Over Opinion

今年一番好きだったビデオは、この「I’m Tight」でした。

Daphni – Cherry

Caribouのダンス寄りな作風の名義での久々のアルバム。こっちをメインの名義にして欲しいです。

Vulfmon – Here We Go Jack

「幻の自主制作の希少ファンクLPが奇跡の発掘再発!」的なイタズラっぽさ、なかなか狙っても出せない泥臭さです。

Actress & Mount Kimbie – AZD SURF

両者の好きなところが組み合わさって、しっかり掛け算になってます。

Au Suisse – Au Suisse

Morgan Geist(Metro Areaの人) と Kelley Polar(Metro Areaの曲でストリングスを担当してた人)のコラボレーションはロマンチックな80年代風シンセポップ。

Domi and JD Beck – Not Tight

Blue Noteの傘下にAnderson .Paakが作った新レーベルからデビューの20代そこそこの2人組。二人の魅力について挙げ出したらキリがないけど、特にゴムのようなドラムの音に驚きました。

町あかり – 総天然色痛快音楽

理想的な歌謡曲。アルバム全体を通じて歌詞の内容にこんなワクワクすることはなかなか無いですね。

Salamanda – Ashbalkum

韓国の2人組アンビエントグループ。全然スピってなくて明るくほがらか、気難しさも悪ノリもゼロでずっと聴いていられます。

Young Marco – Boiler Room x Dekmantel 2022

まだ「一周回って、逆にアリ」になっていない、90年代初期のトランス系テクノだけの選曲でガッツリと盛り上げてます。かっこ悪いものをかっこ良いものに、リスナーの価値観をひっくり返すことができる本物のDJ。

徐々に日常が戻りつつあると言っていいのか、単に状況に慣れて無感覚になっただけなのか。ライブ公演なんかもボチボチ戻りつつありますが、田舎に住んでるといろいろ厳しい状況なのは相変わらずで、チケットの価格高騰もひどいことになっている上に、楽器や機材の値上げまで始まってしまい、世の中お先真っ暗、こりゃ参ったな、という感じです。ここで諦めてしまわずに、這いつくばってでも楽しさのタネを探していくことが、5年後、10年後のために大切なんでしょうね。

そんなこんなで、よく聴いた曲をガサっとSpotifyにまとめたので、新しい音楽との出会いのきっかけになれば嬉しいです。曲順には特に意図はないので、シャッフルして聴いてください。

音楽系ドキュメンタリーやドラマで最近良かったもの6本 – 優勝はウータン・クランの伝記ドラマ

最近サブスクの映像配信サイトで音楽系の番組をたくさん見ているので、良かったものをまとめておきます。こういうのをまとめるのにはSNSよりもブログが向いてますね。

アトランタ – シーズン3/ Atlanta Season 3

チャイルディッシュ・ガンビーノことドナルド・グローバー制作総指揮、監督、脚本、主演のドラマのシーズン3。駆け出しラッパーとマネージャーの日常をオフビートのコメディタッチで描いたシーズン1、2に対して、シーズン3は「これ、今見てるのは本当に『アトランタ』なの?『ブラック・ミラー』じゃなくて?」というような実験的な内容のエピソードが続きます。昨日今日くらいからアメリカでは最終シーズンのシーズン4が公開されたところです。DIsney+で見ました。

リゾのビッグスター発掘 / Lizzo’s Watch Out For The Big Grrrls

Lizzoが自分のライブのバックダンサーをオーディションする番組。アメリカの定番リアリティ番組的なエンタメの皮をかぶっていますが、その実態は、Lizzoが日頃アーティストとして発信し続けているボディポジティヴ、セクシュアリティ、自己肯定、人種などのメッセージを超絶わかりやすい形に凝縮した、超社会的・政治的な教育番組です。多くの視聴者の人生になんらかの影響を与えるんじゃないでしょうか。エミー賞獲得も納得です。Amazonプライムビデオで見ました。

とんでもカオス!: ウッドストック1999 / Trainwreck Woodstock’99

悪名高い1999年のウッドストック・フェスのドキュメンタリー。失敗フェス物という点で、名作ドキュメンタリー「FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー」にかなり近いものがあって、3部構成の第2部までは「FYRE」のように半笑い感覚で楽しく見れるのですが、第3部に入ったところで完全に次元が切り替わります。Netflixで見ました。

jeen-yuhs カニエ・ウェスト3部作 / jeen-yuhs

1998年、売れる前のカニエと出会った監督が、そのスター性に惚れ込んでドキュメンタリーの制作を開始し、現在まで続いていた密着撮影の膨大な時間の映像を、コロナのロックダウン期間中に編集して280分にまとめたのが本作です。プロデューサーとしては早くから高く評価されていたものの、ラッパーとしてはまったく認めてもらえない中で雑に扱われるカニエ、それでも営業しまくるカニエ、自信を失わないカニエ、そして成功を手にするカニエ、調子に乗るカニエ、それぞれの場面にしっかりカメラが密着しています。Netflixで見ました。

セックス・ピストルズ / Pistol

セックス・ピストルズの伝記を、スティーヴ・ジョーンズの本をもとにダニー・ボイルが監督で全6話のドラマ化。ピストルズ本体のサクセスストーリー的な部分よりも、マルコム・マクラーレンやヴィヴィアン・ウエストウッド、両者の店で働く女性達(クリッシー・ハインド!)のような、バンドの影に隠れた重要人物達が描かれている部分に新しさがあります。バンド伝記物の映像作品は、時間軸をねじ曲げて無理矢理120分の映画枠にまとめるよりも、このような連続ドラマ形式にまとめるほうが適しているのではないでしょうか。今後は全部これで行きましょう。DIsney+で見ました。

ウータン・クラン:アメリカン・サーガ / Wu-Tang: An American Saga

ウータン・クランの伝記を、RZAの本をもとにメンバーが監修で連続ドラマ化。そもそもウータン・クラン自体が虚実が混ざったような存在なので、虚に行き過ぎても、実に行き過ぎても、どっちに行っても興ざめだなと思っていたので、正直あまり期待せずに見始めてみたら、これがメチャクチャ面白い! ドラマを盛り上げるためにはしっかり話を盛るけど、ウータンの核にある音楽やヒップホップについては丁寧に描く、虚実のさじ加減がバッチリです。世の中にヒップホップをテーマにした映像作品は山ほどありますが、こんなにしっかりSP-1200やASR-10を取り上げている作品は他にあったでしょうか。音楽を制作することに対するリスペクトがストーリー全体に溢れています。シーズン2にはサンプリングやミックスを試行錯誤するRZAの頭の中を表現したエピソードがあり、あれは歴史に残る映像でしょう。今回の優勝作品です。DIsney+で見ました。