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2018年ベストミュージック

2018年に発表された音楽の中から、よく聴いた10作品を選びました。

Krystal Klear – Neutron Dance

「ニュー・オーダーやストック・エイトキン・ウォーターマンの曲のイントロだけをループさせて、ほんの少しだけ現代的に調節した音楽が聴きたいなー」と長年夢想してましたが、まさにこれがそれ。(Amazon / iTunes)

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この音質。この抑制。このバンドはどんどん良くなってますね。(Amazon / iTunes)

Stephen Malkmus and the Jicks – Sparkle Hard

かつての不思議ちゃんインディーロック青年も、いつの間にかすっかり歴戦を生き残ったインディーロック親父に。今年はこのアルバムと「Crooked Rain, Crooked Rain」ばかり聴いてた時期もありました。(Amazon / iTunes)

Thomas Fehlmann – Los Lagos

第三?第四?のThe Orbメンバー、気品すら漂うさすがの音響工作に、そこはかとなく感じられるユーモア。引き出しの数が多い。多過ぎる。(Amazon / iTunes)

Pusha T – Daytona

Kanye West「Ye」、Kid Kudi & Kanye West「Kids See Ghosts」と合わせて、カニエとMike Deanのコンビがプロデュースを手がけてる3枚のアルバムのズバッ、ドバッ、ヒョロッとしたロック感は安定して高水準で、二人への信頼感はさらに高まりました。(Amazon / iTunes)

Onra – Nobody Has To Know

フランスのビートメーカー。80年代中期ごろのニュージャックスウィングやブラコンのイントロをループさせただけのようなアーバンなビート集。ここまで徹底できてるものはなかなか無い。(Amazon / iTunes)

Tom Trago – Bergen

手弾き感がしっかりと残っていて人肌の温もりが感じられる、オランダの控えめテクノ。だいぶ控えめ。(Amazon / iTunes)

Chaka Khan – Like Sugar

納得の Switch プロデュース。素材に徹したシャカシャカ、シャカカン65歳の輝き。ぜひこの路線でアルバム作って欲しい。ビデオもすごく良いです。(iTunes)

Selling – On Reflection

Gold Panda と Jas Shaw (Simian Mobile Disco)のコラボ。アナログシンセとステップシーケンサーが紡ぐ電子オルゴールの実験場。(Amazon / iTunes)

Lorenzo Senni – The Shape Of Trance To Come

レイヴやハードコア・テクノの曲の、ドラムが抜けて「ジャン!ジャン!」というスタブ・ヒットだけになる、あの部分だけの曲を作る男。Boiler Roomでのライブでは、その「ジャン!ジャン!」という音だけの音楽で踊る人達という衝撃の光景が。未来の音楽です。(Amazon / iTunes)

今年になってようやく自分もサブスク形式の音楽サービス(まずApple Musicから始めて、結局Spotifyに安住)を使い始めましたが、これは確かに音楽の聴き方が変わりますね。スマートフォンとの組み合わせの破壊力たるや。聴きたい音楽を全部「買って」いた時の感覚をすっかり忘れてしまいました。それが良い悪いじゃなくて、そういう状況を心情的に受け入れられるかどうか。

というわけで、2018年によく聴いた作品、上の10作品プラス、その他によく聴いた10曲をまとめたプレイリストをSpotifyで作りました。こんなことが簡単に、しかも合法で可能なんですから、そりゃ破壊力は凄いです。今後もサブスク形式以外にも、音楽の新しい聴き方や音楽との出会い方がどんどん発明されて、いろんな形で音楽体験ができる世の中になっていって欲しいと願います。

これでいいのか、1983年プリンスのピアノ弾き語りアルバム

プリンスが1983年に録音していた自宅スタジオでのピアノ弾き語り演奏集「Piano & A Microphone 1983」がリリースされました。

おそらくこれがプリンスの遺族が運営する財団の主導でリリースされる最初のアルバムで、倉庫(The Vault)からの最初の蔵出しアルバム、ということになるのかなと思います(シングルとしては「Nothing Compares 2 U」が最初)。

正直言うと、「本当にこれでいいの?」というのが、このアルバムのリリースを知ったときと聴いたときの感想です。数えきれない未発表曲とリハーサルの録音テープが眠る倉庫からの最初の蔵出し作品が、YouTubeで誰でも簡単に聴けるような、海賊盤として大昔から流出済みの音源で、音質についても劇的な改善があるわけでもなく、カセットテープの音質そのまま。「本当にこれでいいの?」です。

財団がこれを第一弾に持ってきたことには財団なりの理屈があるのは十分に理解できます。確かに最後のツアーはピアノ弾き語りライブでしたし、プリンスの違う側面を見てもらいたい気持ちもわかります。しかし、これを出す前にあれを出すべきでしょう、いやいや、存在すら知られていないようなものを出して驚かせてよ、というような自分の気持ちを抑えるのは難しいです。

今回の「Piano & A Microphone 1983」についての財団の判断が何もかも良くないということではなくて、ジャケットのデザインは素晴らしいですし、「Mary Don’t You Weep」のミュージック・ビデオも、故人のビデオによくある過去映像の切り貼りではなくて、メッセージ性のある完全な新作映像を若手監督に撮らせるような積極性はとても良いと思います。音楽の部分については言うまでもなく、ライブでのピアノコーナーを愛する者の一人としては、プリンスのファンキーなピアノが聴ける待望の内容であることは間違いないです。あと、アルバムにボーナストラックや別日のピアノ弾き語り録音をくっつけていないのも好感度高いです。

こうして書いて頭の中を整理していく過程でよくわかったんですけど、この心理状況は完全にワガママなファンの心理で、あんまりこの方向で「運営のあるべき姿」みたいなものを生真面目に求めていくような姿勢でプリンスの財団と向き合っても何ひとつ幸福なことは無いので、好きなアーティストが亡くなった後にも新曲がリリースされ続ける予定であることの幸福と、その異常な状況を面白がる気持ちを常に忘れずに、今後のプリンスの新作を楽しんでいきたいなと思いました。