マイケル・ジャクソン「Bad」のプリンス録音バージョンが存在する(かもしれない)
マイケル・ジャクソンがアルバム『Bad』のタイトル曲「Bad」を作るにあたって、この曲をプリンスとのデュエットにしようと話を持ちかけたが断わられた、という逸話は、マイケルとプリンス双方のファンの間ではそこそこ知られたエピソードだと思います。日本のWikipediaにも載ってました。
元々はプリンスとのデュエット曲として制作されていたがプリンスが「僕が参加しなくてもこの曲は売れるよ」と言ったことからデュエットは中止に。
『Bad』をプロデュースしたクインシー・ジョーンズもこの話を認めていて、マイケルの家にプリンスを招待して、話し合いの席が持たれたそうです。1997年のプリンスのインタビューでは、曲冒頭の歌詞「Your butt is mine」の部分が問題だったと、それをマイケルに向かって歌うのも嫌だし、マイケルから歌われるのも嫌だと、冗談めかした雰囲気で断った理由を明かしていました。
プリンスは「Bad」でのデュエットを断った代わりに、アルバム『Bad』のために未発表曲「Wouldn’t You Love To Love Me?」の提供を提案しましたが、マイケルはこれを採用しなかった、というところまでが「Bad」にまつわって今まで知られていた話です。
そこに、最近になって新しい話が出てきました。
2016年7月に公開されたEarwolfというサイトが提供するポッドキャスト番組「Love City with Toure」の中で、プリンスの80年代中期の恋人で、当時のプリンスの作品に様々な形で関わっている女性、Susannah Melvoinが、プリンスが「Bad」をレコーディングしたと証言しています。
マイケルが「I’m Bad」と歌ったとき、マイケルはリリース前にプリンスにトラックを送ってきました。マイケルはプリンスに一緒に歌うよう望みました。プリンスはマイケルが(自分のことを)「I’m Bad」と呼ぶような度胸があることを信じられませんでした。プリンスは「彼(マイケル)は全然Badassじゃないだろ」という感じでした。彼はマイケルにお仕置きを与えずにはいられませんでした。
彼はマイケルと一緒に歌うつもりが無いだけではありませんでした。彼はスタジオに入って、彼が(この曲を)どのようにするべきか、思ったとおりの内容に再レコーディングして、マイケルに送り返しました。「歌わない。ついでに、この曲はこのようにするべきだ」という感じです。これでこの話は終わりでした。でも、これがプリンスのやり方なんです。
本当ならすごい話です。プリンスが「こうあるべき」と考えた「Bad」。プリンスの保管室(The Vault)の中に録音は残っているのか、マイケルの側には残っているのか。
今のところ再録音の証言がSusannah Melvoinからしか出てきていないので、プリンスが「Wouldn’t You Love To Love Me?」を提供したことを彼女が混同している可能性を捨てきれないのですが、プリンスが亡くなって以降、様々な方面から様々な情報が出てきて、無いとされていたものが有ったり、そうとされていたものがそうではなかったり、定説とされていたものが日々コロコロとひっくり返っているので、この「Bad」の話も、ワクワクする話のひとつとして心に留め置きつつ、粛々と保管庫の調査の進展を待ちたいと思います。